理学と工学の違い

宇宙工学はもちろん理系で工学の一分野です。しかし、理学との関連も深い分野です。ここでは、理学との違いを見てみましょう。普通、理学というと、物理学・数学・天文学・化学・生物学のように、それを何かに利用しようというよりも、まずは未知への探求とか原理原則の追求が根幹にあります。もちろん、その結果得られたものが、世の中の役に立つことも少なくありませんし、それが理学の発展の原動力にもなります。また、目先の差し迫ったことだけではなく、長い先を見据えた優れた研究も多く行われています。高校までに学ぶ理科や数学は、さらに大学でも最初に学ぶ基礎科目は、このような先人達が集大成したものです。大学での理学では、それをさらに発展させ追求することに主眼が置かれます。

それに対して工学では、直接生活の役に立つものを実現するための学問を追究します。と言っても、基礎的なものから応用的なものまで、幅が広いので、基礎的なものは理学との関連が深いものも少なくありません。また「もの」と言っても、必ずしもハードウェアとは限らず、最近はソフトウェアも増えてきました。しかし、理学との違いは、やはり何らかの形で身近なものに関連付けしやすいということがいえるかもしれません。自動車や飛行機や鉄道にあこがれて、将来なにか開発したり製造したりする仕事に就きたいと思ったら、まず工学部が対象になるでしょう。宇宙工学もこのような中で、ロケットや人工衛星を開発したいとか、人工衛星を使って宇宙ビジネスを展開したいとか、観測システムを作りたいとか、そのようなものがまず思い浮かびます。これらの開発に基礎的な研究は欠かせませんが、それだけでロケットや人工衛星の複雑なシステムができるわけではありません。そこで、宇宙工学は、応用工学・システム工学とも見なすことができます。複数の装置や部品が組み合わさって、相互に作用を及ぼしあい、そこから何か新しい効果を発揮する時、それはシステムといえます。人と人の共同作業と同じようなものです。このようなシステムとして考えることが多いのが宇宙工学の大きな特徴ですし、そこにおもしろさを見いだすことができます。