インフレータブル構造および軽量膜アンテナに関する研究

20m級の大形アンテナを、軽量・高収納効率かつ低コストに構成することにねらいを置くとともに、さらにそれに加えて様々なミッションに応用が可能なように、基礎的な構造としてインフレータブルチューブを取り上げて研究を進めてきました。[大形な宇宙構造を低コストに作るために-ヒンジで結合された構造からインフレータブル構造へ-、日本機械学会宇宙工学部門、日本機械学会員のための宇宙工学概論、 (2004-1), 131-138]

硬化型インフレータブル構造に関する研究

宇宙で硬化させる硬化型インフレータブル構造について研究を行ってきました。熱硬化型のインフレータブル構造では、炭素繊維織物に室温で長期間保管が可能なロングライフレジンを含浸させたプリプレグを用いる方法について、膜材の研究開発から物性評価について研究を行ってきました。また、未硬化状態で折り畳む必要があるインフレータブル構造の硬化層を1層で構成できるようにするため、低織密度の三軸織物を適用し、軽量で柔軟性に富む硬化型インフレータブル構造を実現しました。また、熱硬化型に比べて硬化時のエネルギーが小さい硬化法として冷却硬化法についても研究を行ってきました。冷却硬化法では、展開前の状態で硬化層の柔軟性を確保するとともに、長期間の常温での保存を可能にするため、樹脂を繊維状に加工したものと強化繊維を織り込んだ混交織布(Co-Woven)を硬化層に用いて、極めて柔軟性・保存性に富むインフレータブル構造を実現しました。[Deployment Characteristics of Rigidizable Space Inflatable Structures, Space Technology, Lister Science, Vol. 23, No. 2-3, (2003), pp. 119-129など]

インフレータブルチューブの安定的な展開に関する研究

インフレータブル構造は、宇宙の微小重力環境下で安定的に展開する必要があります。このような観点から、これまでのジグザグに折り畳む方法や丸めて畳む方法に対して、展開の安定性が高く、内部の気体を完全に排気できる方法として多角形折りを採用しました。また、インフレータブルチューブの試作や物性評価により、硬化後に折り目が構造特性に与える影響の評価や、展開実験や展開解析による折り目が展開特性に与える影響を評価しました。一方、長さ2 mのインフレータブルチューブを用いた航空機のパラボリックフライトによる微小重力環境下での展開実験や、長さ30 cmの供試体による多数の微小重力環境実験を行い、折り方が展開特性に与える影響を様々な観点から評価しました。[Deployment Characteristics Evaluation of Inflatable Tubes with Polygon Folding Under Airplane Microgravity Environment, Space Technology, Lister Science, Vol. 25, No. 3-4, (2005), pp. 127-137など]

軽量なインフレータブル方式のパラボラ反射鏡に関する研究

反射鏡は、インフレータブル構造でも膜面の面積が大きいので、全面を硬化させると質量や収納時体積が大きくなります。このため、現在は、宇宙で常時内圧を付与して使う方法が検討されています。これに対して、長期間のミッションにも適用可能なように、レンズ状の反射鏡の電波反射面のみを硬化させ、他の部分は薄いフィルムで構成する形式のインフレータブル反射鏡について研究を行ってきました。20m級の反射鏡に適用した場合のリブ材やフープ材への要求条件の剛性解析検討や、いくつかのモデルの試作と、その展開硬化実験、硬化後の鏡面精度測定・BS受信実験・放射パターン測定実験などから、この方法によるパラボラ反射鏡の実現可能性を明らかにしました。[鏡面硬化型インフレータブルパラボラ反射鏡の検討、第47回宇宙科学技術連合講演会講演集、03-2G4、 (2003.11.17-19), 新潟、972-977など]