実験レポートを自分で製本してみよう!

実験の授業で書くレポートを、終わったらそのままにしておくのはもったいないし、その内に散逸してしまいます。それをしっかり残すために、自分で製本してみませんか?しかも、簡易製本ではなく本格的なハードカバーの製本です。最近では周りを見回しても、ハードカバーの製本を自分でやったことがある人というのはあまりいないと思います。それだけ希少価値が高いということで、きっとやりがいを感じていただけると思います。

実験の授業で学生の皆さんが一番苦労するのがレポートの作成だと思います。2コマ3時間の実験授業を2週行うとすると、授業時間は正味6時間になります。それに対して、ほぼ同じくらいの時間を(人によってはそれ以上)実験レポートの作成に費やします。それが半年の学期期間中に6〜7もテーマあります。実験レポートはその全てが自分で書き上げたものですから、学生の方にとっては一生とっておきたい大切なもののはずです。それを確実に残しておくことはできないでしょうか。

今はパソコンで作成することが当たり前なので、電子ファイルとして残っています。パソコンが故障しても買い替えても大丈夫なようにバックアップやクラウドサービスを使ってファイルの管理していることでしょう。しかし、膨大なファイルに埋もれて見ることもなくなり、その内にどこに行ったのかわからなくなることもあります。せっかく、その時は一所懸命に書いたのに。

  • 卒業する時に、お世話になったご家族の方に見せてあげたいと思いませんか?
  • 将来、自分の子どもに見せて自慢してみたいと思いませんか?
  • 何よりも、自分の本棚に最初に作った本として並べておきたいと思いませんか?


このようなことを考えて、2016年度の秋学期に、航空宇宙学専攻の支援を得て、またボランティア学生の協力を得て「実験レポートを自分で製本してみよう!」という取り組みを行いました。授業終了後の2月の2日間(各日2時間程度)の日程で集まってもらってハードカバーの製本に取り組んでもらいました。しかし、最近の学生さんは多忙のようで、参加したいけれで2日も都合がつかないという声を多数聞きました。また、企画する側も教員だけでは手が足りずボランティア学生の協力が不可欠でした。そもそもインターネット全盛の時代にそぐわないアナログ的な取り組みですから、これは仕方がありません。

そこで、考えました。レクチャーした内容をインターネットで公開して、皆さんがご自分で好きな時に好きな場所でできるようにしようと。友達といっしょにやってもいいし、また何も2日間は連続している必要もありません。糊が乾くのに時間が必要なだけなので間が開いても構いません。また、インターネットでの公開ですから、学内外の方々にも広くご覧いただけます。是非チャレンジしてみてください。さらに、ここで腕を磨いて、今度は卒業論文や修士研究論文の製本に挑んでいただいても良いでしょう。2016年度は数名の学生が自分で製本した卒論を手にして卒業して行きました。

と、ここまで読んでこられた方の中には疑問を持たれる方もいるでしょう。

  • 人に見せるか自己満足だけのためにそこまで手間をかけるのか。
  • 手先が器用ではないので、うまくできるかどうか自信がない。
  • そもそも面倒だ。一体自分で製本するメリットはどこにあるのか。
  • 費用はかかるけれど、外部の業者に頼めば綺麗に製本してくれる。


いずれももっともな疑問だと思います。しかし、ハードルが低い場合は、あまり深刻に考えずに、まずはやってみよう、でも良いのではないかと思います。ただそのハードルが高いのか低いのかわからないから重い腰が上がらないだけ。ここでご紹介するコンテンツの目的は、だからそのハードルを下げることにあります。失敗しても大きな損害はないでしょう。ちなみに、私は仕様は異なりますがこれまでに10冊以上の製本をしてきましたが、出来栄えは別にして大きな失敗はしていません。

なんでも買える便利な世の中になって、身の回りで手作りをすることが少なくなりました。しかし、実際に指先を動かしてものづくりをすると、まず仕組みを理解し、どうすればうまくできるか考えます。思ったようにいかない場合は自然と工夫をします。たかが製本一つとっても、学べることはたくさんあります。もっとも、そう大げさに構える必要はありませんし、楽しみながらやれば良いのです。


ハードカバークロス貼り製本のやり方を説明した資料は現在新しいものを計画中です。しばらくお待ちください。

2020年3月29日に電子書籍「実験レポートや卒業論文を自分で製本するということ:学びのプロセスをクロス貼りハードカバーの製本で残す楽しみ」を、むしかご書房からAmazonのKindle版で出版しました。詳しくはウェブサイト右側のご案内をご覧ください。[2021.3.27更新]


[製本を行なった学生の感想1]

当初は誤字脱字のチェック、ページの配置など、論文の確認をする目的で製本しました。日々の研究はとにかく進むことだけを考えていたので、出来上がった本(製本した論文)を見て卒業研究で一体何をしていたのか振り返ることができました。また、大学生活を支えてくれた両親へ感謝の気持ちを伝えるモノのひとつになりました。(I. K.)

[2017.10.22掲載, 2018.2.8, 2020.2.21更新]