パソコンでメビウスの輪を描いてみよう!

はじめに
メビウスの輪をご存知ですか?紙を切って貼り合わせて簡単に作れるので、子どもの頃に遊びで作ったことがあるかもしれません。表(おもて)のはずが一周して戻ってくると裏に繋がっているという立体的な図形です。アートやデザインの世界で利用されていたり、工業製品で使われていたものもあったようです。
ここでは、そのメビウスの輪をパソコンで描くことをやってみようと思います。他の形状でも良いのですが、なぜかここはメビウスの輪です。曲線で構成されるメビウスの輪の鳥瞰図(斜視図)をパソコンで描くにはどうしたら良いかと考えてみます。それも、デザイナーが使うような専門ソフトや、機械設計者が使うようなCADソフト,AIによる自動描画器?は使わずに、誰でも持っている普通のパソコンソフトを使います。といっても、ここではソフトの名称や使い方は出てきません。目標時間だけを提示します。5分間です。たった5分?か、えっ5分も!なのか、いかがでしょうか?
なお、ここでは、パソコンを使い始めてまだあまり慣れていない方を対象としています。つまり極めて初歩的なことだけを述べます。ベテランの方が読まれても、あまりお役に立てないことをご了承ください。


1.目標を設定する
ここで描くメビウスの輪を下図に示します。これを下絵にして忠実になぞります。要するにトレースです。頭で想像しながらメビウスの輪を描くのではありません。つまらないかもしれませんがトレースです。図の下のアイコンをクリックするとjpegまたはpdfで画像ファイルとしてダウンロードできますので、それを使ってみようと思うソフトの作業画面の上にコピー&ペーストします。

ダウンロード
メビウスの輪ダウンロード用
メビウスの輪ダウンロード用.jpeg
JPEGファイル 112.0 KB
ダウンロード
メビウスの輪ダウンロード用
メビウスの輪ダウンロード用.pdf
PDFファイル 6.7 KB

5分間について少し説明をします。最初は時間がかかるけれども慣れると早くなるケースが多いと思います。つまり下図に示すように、時間とともに所要時間が変化していきます。これは個人差が大きいと思いますので、多少慣れてテキパキできるようになったあたりの時間が5分間ということで良いでしょう。競技ではありませんので、時間を競うことはしません。
ここで、よし!と思った人はすぐに初めても良いのですが、そうでない人、自信がない人、迷ってしまう人は、以下を読みながら練習をしてから描いてみてください。


2.まずトレーニングをする
パソコンの基本中の基本ですが、直線を引きます。操作の仕方はソフトにより異なりますが、マウスだけで簡単に描けます。こうして最初に描く線の条件は「デフォルト」と呼ばれます。あらかじめ設定されている初期状態のものです。したがって自分が意図したものとは違う場合が多いので、これをそのまま使うことはあまりありません。自分が表現したいように線の設定を変更します。太さ、種類、色などです。端部を矢印にしたり、またその矢の種類などいろいろあります。後でも変更できますが、このあとコピー&ペーストをしながら作業をしていく場合は、ある程度最初に決めておいた方が後の手間が省けます。

次は今回のメビウスの輪の核心である曲線です。曲線の描き方にもいろいろありますが、ここでは下に示す二つの方法を練習します。

方法Aは、似た形状の基本図形を描いてそれを修正しながら目的の図形に近ずけていく方法です。これは全体(大まかな形状)から部分(微調整)へと手を加えていくので、効率よく作図ができます。滑らかな図形であればこの方法が一番速いと思います。

方法Bは、元の図の線をなぞるようにコネクタを置いていき、コネクタ間を直線でつないでいくように描く方法です。コネクタでの接続を「シャープ」にすると不連続な接続になり、「スムーズ」にすると連続的で滑らかな接続になります。コネクタを数多く置くと曲線の近似精度が上がる反面、後で修正する際の調整点の数が多くなり、かえって手間が増えます。可能であれば後で不要なコネクタを削除し、適切なコネクタ配置にした方が良いでしょう。
(補足1)コネクタの置き方やここで使っている用語はソフトにより異なる場合があります。
(補足2)ソフトによってはベジェ曲線が扱える場合があります。これは、接続点における接線を直感的にコントロールすることで接続の具合を調整する機能です。慣れると大変便利ですが、今回のようなケースではベジェ曲線を使うまでもなく、使うとかえって時間がかかるかもしれません。


3.ルーペで観察する
曲線の場合は、滑らかに描けているかどうかと線が接続するところが不自然にずれていないかに注意が必要です。そのためには、ルーペの機能で観察するのが一番です。パソコンではメニューで簡単に拡大が選べます。十分に大きく拡大して隅々まで観察し、おかしなところを手直ししていきます。これをやるだけで、出来栄えが断然違ってきます。


4.念を入れる
ルーペで細かなところを観察し修正をしたら、もう一度全体を表示させます。ここでバランスを再度確認します。ずれや傾き、揃っているべきところが不揃いになっていないか、などです。拡大したほうがわかりやすい場合と、全体を見渡したほうが良い場合と、うまく使い分けてください。全体を見てバランスをとり、細部にも目配り(気配り)をする、何事においても基本ですね。


5.メビウスの輪に挑戦
基本的な図形でのトレーニングが終わったら、最初に示したメビウスの輪に挑戦してみてください。目標は最初に述べましたように5分間です。


おわりに
さて、いかがでしたか。数回やって見てうまく5分以内で描けるようになったでしょうか。ゲーム感覚で楽しんで貰えればよかったのですが、最後に獲得できるメリットをお伝えしておきます。
ここを読まれている方には学生の方が多いと思いますが、実験レポートや卒業論文などで図を描くことがあるでしょう。私が学生の時は手書きで書きましたが、今ではパソコンで作成することが多いでしょう。実は手書きで描いていた頃はどうしていたかというと、コンパスの他に下図にあるような雲型定規を使っていました。うまくあう曲線を見つけて(時々鉛筆を傾けて)なめらかに見えるように線を引きます。今ではパソコンという便利な道具が使えるのに、出来栄えが今ひとつというのを残念に思っていました。このメビウスの輪を使って、少し練習をして、実験レポートや卒業論文などでこれから描く図に役立てていってください。また、社会に出たら、この程度のものであれば、専門ソフトやCADソフトを使わなくても5分程度でさっと描けるということはきっと役に立つと思います。

[2017.11.6掲載,2017.11.7更新]