石村康生・角田博明著「学ぶ力のトレーニングー未来のあなたがつくる今の自分ー」東海大学出版部(2017年4月30日刊行)


  • 大学初年次生 大学での学びに迷ったら、自分の将来に不安を感じたら、まず読むときっと役に立つ。
  • 大学高学年 就活の前の必読書。仮に就活中でも徐々に視野が開けてくる。
  • 大学院生 これまでに大学生活を振り返って、不足がないかこの本で総点検しよう。もしあっても、取り返すことができる。

2017 年4月に東海大学出版部より、「学ぶ力のトレーニングー未来のあなたがつくる今の自分ー」(1,800円+消費税) が出版されました。大学生をはじめ、高校生や社会人1、2年生あたりまでを対象とした、自らの成長を意識した学び方に関する本です。自己啓発本とは異なり、無理なく自然体で学びを究めることをねらいとしています。その手段として、自分の興味や関心を拡げ、またそれに向けた日々の生活の工夫を提案しています。登場人物による会話をはさみ、また具体的なアイデアを示すことで、自分の場合に即して現実感をもって読み進められるようになっています。是非お読みいただき、ご感想やご意見などをいただけると幸いです。出版にあたり、東海大学出版部の原裕様、稲英史様には大変お世話になりました。類書とは異なる切り口での企画にご賛同をいただき、こうして書籍の出版が実現できたことを感謝いたします。


執筆を振り返って

この本は、仕事の合間にJAXA宇宙科学研究所の石村康生先生と雑談をする中で、読み物という形で若い人へのメッセージを伝えようという考えから生まれました。以下の小文はその石村先生とは関係はありませんが、随分前のことを思い出しながら書いてみました。

 

宇宙研への道

宇宙研へは、大学に転職する前にも仕事で行くことが多かった。そこの先生との研究打ち合わせだったり、グループでの会議だったり、いろいろな用件で訪問した。横浜線の淵野辺駅から歩い約20分で到着する。平坦な道なので歩きやすいが、途中で交通量が多い国道を横断するので、信号を待つ時間が長い。信号は、それ以外にもあり、タイミングにより所要時間が多少変わる。今は歩く道はほぼ決まっているが、最初のころ、どのルートが早く着けるのだろうかと思い、いろいろと試みたことがある。つまり、碁盤の目のように道が通っているなら、どのルートでも大差はないのだが、道が微妙に斜めに通っているように感じていた。三角形の二辺を歩くより、斜辺を一直線に行ったほうが早いはず、信号が少なければそれも時間短縮につながるはず、と思った。しかし、そこに落とし穴が潜んでいた。

今なら、インターネットの地図を見ながら、GPSを使えば迷うこともないが、当時はそのようなものはまだ普及していなかった。それでも、知らないところに行くなら地図を調べてから行くのだが、何回か行ったことがあり、そこまで下調べをする必要はないと判断した。駅からの方向はわかっているので、普段歩いている道から、たぶんこっちのほうが近いだろうという道に足を踏み入れる。住宅地の中の道を歩いていく。しかし、一本道というわけにはいかないので、途中で何回か修正、つまり角を曲がるということをする。あまり曲がっていると、果たしてほんとうにこれまでより短い距離でいけるのか不安になってくる。しかし、いまさらという気持ちもあり、どんどん歩いていく。

途中で国道を渡るあたりで方針の修正をすれば良かったのだが、どうも依怙地になってこれまでとは違う道を行く。普段の所要時間を過ぎても宇宙研らしいものは見えてこない。約束の時間も過ぎてしまい、気持ちは焦る。焦りながらも、どんどん歩いて行く。だんだん不安が大きくなってくるが、いまさらもうどうしようもない。やっとのことで、宇宙研の敷地らしきものが見えてきた。その時に初めて現状が把握できたのだが、だいぶ正門を行き過ぎてしまっていた。宇宙研の敷地に沿って門まで戻り、受け付けをして構内に入る。約束の時間に大幅に遅れてしまった。その時に、なんと言って言い訳をしたのかまるで覚えていない。歩いた道順も思い出すことはできない。きっと、思い出したくなくて、記憶の中から消去してしまったのだろう。しかし、こうして今頃文章を書けるくらい、当時のハラハラドキドキしながら歩いた気分だけは頭の中に染み込んでいる。

 

「宇宙研への道」を振り返って

まず、単純な教訓が得られる。

  • 地図で現在位置を確認しながら行く。
  • 早めに人に道を聞く。


しかし、少しは本質的なことを考えてみる。

  • 問題は、当初の目論見通りに行かなかったときに、冷静に考えることをしなかった。いや、できなかったこと。なぜできなかったのか。
  • なんとかなるだろうという軽い気持ち。
  • 進めば見通しが得られるだろうという安易な期待。
  • 確実に見える足元をよく見ないで、見えもしない先を見ようとする。落とし穴は、前者より後者のほうが一見ハードルが低いと思えてしまうこと。

 

この一見...と思えてしまう、ということにはどう対処すれば良いのか。
でもそう思えてしまっているので、容易には回避できない?

ここから得られる本当の教訓

  • まず、落ち着く。
  • 止まる。観る。考える。
  • 落ち着く秘訣は?
  • 止まれない場合はどうする?
  • 観るって?目で見るのではない。頭で観る。
  • 考えることにつながるが、実は難しい。
  • それには、トレーニングが必要。


そう考えると意外なことに実は難しくない。普段の心掛けが重要。

 

そのようなことをこの本で扱っています。

(2017年4月17日)