宇宙構造の構成法と人工衛星搭載大形メッシュアンテナ反射鏡に関する研究

通信衛星では、地球局端末の小形化と周波数有効利用のためのマルチビーム化により、搭載用アンテナが大きくなる傾向にあります。また、電波天文衛星でも大形アンテナが必要とされています。このような背景のもとで、金属の細線を編んだ金属メッシュを反射鏡の鏡面に使ったメッシュアンテナについて研究を行ってきました。鏡面は柔らかいので、それをケーブルネットワークで張架支持し、さらに展開トラス構造やリブ構造で支持します。このような、複雑な大形宇宙構造について設計の拡張性と試験評価の観点で優れるモジュール構成法についても研究を行ってきました。

大形宇宙構造のモジュール構成法および展開構造に関する研究

複数の同一形状のモジュールを組み合わせて大形な宇宙構造を構築するモジュール構成法は、設計の共通化や地上での分割試験評価が容易といった観点で、大形化する宇宙構造を効率良く構築する上で重要な技術です。このコンセプトを導入した通信衛星用の大形展開アンテナを対象に、折り畳まれた時の形態を考慮した展開構造について研究を行い、コンパクトで衛星への搭載性に優れたアンテナ構成を明らかにしてきました。[Module Composition and Deployment Method on Deployable Modular Mesh Antenna Structure, 46th Congress of International Astronautical Federation, IAF-95-I.6.05 (1995.10.2-6), Oslo, Norwayなど]

地上における大形宇宙構造の展開試験法に関する研究

大形宇宙構造は、地上の重力環境下で宇宙での展開特性を評価することが大きな課題です。大形展開アンテナは展開時の剛性が低いため、地上での試験を困難なものにしています。このような背景から、天井から長さと張力を制御したケーブルで吊り下げた状態で、かつ吊り下げ点を極めて小さな摩擦係数で水平方向に移動できる展開試験装置を研究開発してきました。また、この装置を使って、大形メッシュアンテナの展開試験を行い、設計評価を行うのに十分な精度で展開試験が行えることを明らかにしました。[大形宇宙構造物用の磁気支持スライダ展開試験装置、日本航空宇宙学会誌、46-539 (1998-12), 687-694など]

展開試験による大形宇宙構造の設計評価に関する研究

展開構造を一層軽量化するために、部材に作用する荷重に基づく構成品の最適配置を設計に取り入れる方法を研究してきました。展開力の評価では、機構の摩擦や非同期性による展開抵抗力などを定量的に評価し、また前述の展開試験装置を用いた展開実験から、展開力設計の評価を行い、設計の妥当性や非同期性に伴う不確定性などを明らかにしてきました。[Design Evaluation of a Large Deployable Mesh Reflector, AIAA J. Spacecraft and Rockets, 37-1 (2000-1/2), 108-113など]