衛星搭載用大形アンテナシステムに関する研究

通信衛星に搭載するアンテナは、構造設計・機械設計を基礎に、宇宙で所望の電気性能を発揮するように電気設計を行う必要があります。そのためには、構造・機械と電気の各設計の連携が極めて重要です。このような背景のもとで、大形メッシュアンテナがその特徴を最大限に発揮できるように、給電部の設計からアンテナ全体での放射パターンの設計まで、大形アンテナシステムとして実現に向けた研究を行ってきました。

アンテナの指向方向制御や展開後の指向誤差の補正に関する研究

これまでは、アンテナ鏡面や支持点をアクチュエータで駆動してアンテナの指向方向の調整が行われてきました。これに対して、構成が簡単で信頼性が高い方式として、給電部における励振位相と励振振幅を電気的に制御するフェーズドアレー給電反射鏡アンテナシステムに関する研究を行ってきました。開口径13 mの離焦点給電反射鏡アンテナを対象に、変形したビームパターンを補正するためのアンテナ設計法を解明してきました。また、給電部の試作を行い、その一次放射パターンの測定、および反射鏡を介した二次放射パターンの解析による予測から、アンテナ設計の妥当性を評価し設計技術を確立しました。[衛星搭載反射鏡アンテナ用フェーズドアレー給電部の電気設計と試作、電子情報通信学会論文誌、J82B-7 (1999-7), 1357-1365など]

高性能な大形アンテナシステムに関する研究

大形メッシュ反射鏡を使い簡単な構成でより高利得なアンテナを実現する方法として、ローレベルビーム形成回路を用いたクラスタ給電反射鏡アンテナシステムについて研究を行ってきました。アレーアンテナを給電部とする大形アンテナシステムにおいて、高出力増幅器に信号を入力する前段に配置するビーム毎の励振振幅・励振位相を調整する装置の研究開発を行い、部分モデルの試作と実験による特性測定から、本手法の妥当性を明らかにしました。[ハイブリッド型ローレベルビーム形成回路によるクラスタ給電方式の検討、電子情報通信学会論文誌、J83B-3 (2000-3), 324-331など]