宇宙開発から宇宙利用へ

これまで宇宙開発という言葉が広く使われてきました。その中には、人類の活動の範囲の拡大があったのだと思います。地上・地表で生活し活動してきた人間が、飛行機を発明し空を飛べるようになり、あるいは海底や海洋上まで活動の範囲を広げてきました。空のもっと高いところを飛べたらとロケットを発明し、数多くの人工衛星を打ち上げたり、人間が宇宙に進出することをも可能にしてきました。宇宙を利用すると、これまでにできない様々なことができるようになります。例えば、地球上に望遠鏡を置いたのでは、大気による電磁波の減衰でうまく観測できない場合でも、宇宙に望遠鏡を置き高度な観測ができるようになりました。このような大形な望遠鏡を宇宙に運び運用すること自体、工学の発展が不可欠です。こうして、工学の発展により理学(天文観測)が発展しました。直接、惑星探査機を打ち上げて火星や木星などを観測することも行われています。これも、工学と理学の融合による成果です。

地球の周りを回っているのは人工衛星です。いつも回っているので、観測センサで地球を隈無く調べることができます。高度500〜1000kmのところを、このような観測衛星が沢山回っています。地球の自転と同じ角速度で飛んでいる人工衛星は高度約36000kmのところを回っており、地球上から見ると静止して見えるので、定点観測や無線の中継に便利です。このような人工衛星で電波の中継をすれば、見えないところ同士でも通信ができます。また、乗り物で移動しながらでも通信ができます。しかも、大量の情報を低コストで送ることができます。気象衛星「ひまわり」の雲画像は天気予報に欠かせません。また、放送衛星でいつでも高品位な映像を楽しむことができます。高度約400kmのところを飛行する宇宙ステーションの利用も着々と進んでおり、ここで様々な宇宙環境利用の実験が計画されています。このような実例を見てくると、宇宙開発の時代は終わり、今や宇宙を利用してそれをいかに人類の生活に役立てるかに知恵を絞る時代になったと言えます。