宇宙利用の活性化と構造物の大形化

先に述べたような宇宙利用技術が進むと、人工衛星に搭載する機器に大形化が求められてきます。多くの人工衛星は必要な電力を太陽光発電でまかないますので、大電力を得るためには太陽電池パネルの面積を大きくしなければなりません。また、地上と通信をしたり宇宙からの微弱な電波を受信するためにはアンテナの高性能化が欠かせません。アンテナを高性能にするための有力な方法のひとつが寸法を大きくすることです。アンテナは、また使用する周波数(波長)によって寸法が異なります。衛星放送で使われる12GHz帯(波長約25mm)に比べて衛星移動体通信で使われる2.4GHz帯(波長約125mm)では、同じ角度のビームを作るためにパラボラアンテナの直径を約5倍にしなければなりません。

一方で、人工衛星を打ち上げるロケットの荷室は直径が最大でも4.5m程度の円筒形状であり、この中に衛星の本体と一緒に太陽電池パネルやアンテナを小さく折り畳んで収める必要があります。また、大きいからと言って重くなってしまうと、打ち上げコストが高くなってしまいますので軽量化も必須です。

このように見ると、展開すると大きな太陽電池パネルやアンテナになるけれども、円筒形状の荷室にうまく折り畳んで収納できるような展開構造物が必要なことがわかります。また、これらの構造物には、軽量であること、展開後の形状が安定していること、製造コストが安価なこと、展開の信頼性が高いこと、厳しい宇宙環境に耐えられること、などが要求されます。また、アンテナでは、形状寸法の精度やアンテナを向ける方向の精度などが求められます。

これまで、アンテナや太陽電池パネルの大形化について述べてきました。現在は、宇宙ステーションの利用が進められていますし、将来は宇宙で太陽光を使って発電し、マイクロ波やレーザーで地球に送電するといった壮大な構想もあります。こうなると、宇宙構造の大形化はとどまるところがありません。将来、月や火星に人類が足を踏み入れるようになると、そこに居住や物資保管のための建築物を作る必要が生じます。このような大形な構造物には、一部分ではこれまでの大形アンテナなどで培われてきた構造技術が利用できるものの、より軽い構造物を低コストに作ることができる技術を完成させなければ実現は難しいでしょう。